「スク水」は「すくすい」か?「すくみず」か?

※この記事は旧バージョンのビボーログからの移行です。年代や各種固有名詞は記載当時のものです。


Introduction

もう5年くらい前の話ですが、ずっと気になっている (引っかかっている) ことがあります。

「スクール水着の略称『スク水』の読み方は『すくみず』である」

という一方的な意見(を載せているサイトがしぶとく生きていること)です。

※念の為、このページで趣味嗜好がどうのこうのというのは書くつもりはありません。単純に日本語的な問題です。

この記事ではいくつかの例とともに、略語の性質について再確認します。

ただし、ごく一般的なことしか書きませんので、上記意見への反証以外に特に意義はありません。


略語の読み方

上記「すくみず」の意見を掲載しているサイトによると、その根拠は「元が『すくーるみずぎ』だから」という一点のみです (他にも雑誌等を挙げているようですが、あくまで本人の主張であることを前提に書かれています) 。

ちょっと考えれば略語のバリエーションというのは分かるだろうと私は思い、そのうち誰かが指摘するだろうと思っていたのですが、Googleで検索してみても意外と書いてくれている人はおらず……。

さらに相変わらず当該サイトがトップに出てくる状態でちょっとよろしくない。何がよろしくないかというと、2点あります。

間違っているから、と、その間違った認識が広まってしまうから、です。

では何が間違っているのか。単純な話、自分の主張を通したいあまり情報が偏っているのです。

言語学とか、形態素がどうのこうのという難しい話ではありません。

「略語って元の単語をそのまま読んでいるものだけじゃないよね」という割と普遍的 (だと思っているのですが……) なセオリーに一切触れていないのはちょっとナンセンスであると言わざるを得ません。件の記事の問題はそこにあります。

例を挙げると、たとえば「東京・横浜 (とうきょう・よこはま) 」を略すと「京浜 (けいひん) 」になりますね。

Wikipediaの記事を拝借すると、「略語 – Wikipedia」に記載されている略語形成パターンとして

3. 形態素の音声面を捨てて、文字に基づくもの

と、記載があります。「京浜」の例はこれに該当します。

ほかにも例を挙げると、よくTV等で喧伝される東京の駅「三軒茶屋(さんげんぢゃや)」の呼称は「さんちゃ」、同じ沿線の「二子玉川 (ふたこたまがわ) 」は「ニコタマ」、「フタコ」と読み方にバリエーションがあります。

大学名でも早大 (そうだい。元が早稲田大学(わせだだいがく)) や阪大 (はんだい。元は大阪大学(おおさかだいがく)) など元の読みから変わった略語の形態もあります。

※地名・駅名の類は特にこういった読み方の変化が多い気がします。

これ以外にも身近な「スマートフォン」は略すと「スマフォ」……かと思いきや「スマホ」が主流になりましたね。

略語の性質として、何がどう略されるかは歴史的に発話のしやすさ・打ちやすさ (書きやすさ) 等の利便性次第で変わってくる性質があり、それ故に略語表現を固定的に捉えるのは難しいと言わざるを得ないでしょう。詳しい成り立ちや構成パターン等については識者に譲りますが、略語の成立とその運用については、

「『元の単語の読みそのままが略語の発音になる』という考えは一つのパターンであって、必ずしも絶対ではない」

という理解が必要かと思います。

「スク水」の話に戻すと、元の読みがこうだから略したときの読み方もこう、とするのは早計だということになります。


Conclusion

以上をまとめると、

  1. 略語の読み方について、元の単語と同一とは必ずしも限らない
  2. 1. より、 「スクール水着」の略語「スク水」の読みは「すくみず」に限定されない

……じゃあ結局「スク水」は何て読むの?という話ですが、そこは言いやすさ等を含めて自ずと人々の間で収束していくのではないでしょうか。つまり「言いやすいように好きに呼べばいい」が読み方としては結論になります。

「すぐ考えればわかるし、きっとなんとかなる」……と思っていると案外なんとかならないもんですね。
とはいえ学問というものは知識の体系化をするものなので、当たり前に行われている慣習を改めて再確認する、という意義を考えると重要なことなのかもしれません。

P.S.

略語に限らず、同じ単語で異なる呼び方をする例が他にもないか探しています。よければコメントいただければ幸いです。

 – – – – – –

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です