10Gbps フレッツ光 にする前にできれば読んで欲しいメモ

自宅に10Gbpsの回線引いたんですが初 IPv6 (IPv4 over IPv6, IPoE) ということもありめちゃくちゃ苦労した(現在も解決していない問題もあり) のでメモです。できれば契約前に読んでほしいです。

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購入前の方向け

うちマンションなんだけどいける?

諦めましょう。稀にマンションでもいける?のかわかりませんが現状(2023-09-05)新規で戸建てオンリーな気がします。

10Gbps って速いけどちょっと月額料金が高いとかそれくらいでしょ?

違います。大きく違うのが、 IPv6 ベースに切り替わります。 1Gbps 未満の契約だと IPv4 主体でしたが、v6ベースの契約ではグローバルに v6アドレスが割り振られます。

10Gbpsだと今まで1Gbps未満の回線では当たり前だった PPPoE ……つまり平たく言うとプロバイダー(ISP)から封筒が送られてきて、IDとパスワードで認証して……という方法ではなく、v6前提の10Gクラス回線で主流の IPoE という方法ではネットワーク経由での自動認証になります。

これがかなりのクセモノでして、NTTレンタルの XG-100NE(10Gbpsの場合) とそれ以外の、例えばバッファローやYAMAHAのルーターなんかと認証方法(判別用のシグナル)が違うらしいです。

もうちょっと言うと Network Enabler という組織がありまして、v6 では VNE (Virtual Network Enabler) 事業者が v6 ネットワークを(インフラごとではなくデジタルに割り振るという意味合いで)仮想的にユーザーへ割り振ります。

えっ!じゃあ IPv4 は使えないってこと?……そもそも IPv4 使えないとなんかあんの?

v4 が全く使えないわけではないです。IPv4 over IPv6 という仕組みで、平たく言うとお家の近くに着くまでは v6 のトンネルだけど、そこから先は v4 のアドレスを割り振って普通に今まで通り使う、という仕組みが主に採用されています。

この「お家の近く」というのがこれまたクセモノでして、今までは各戸建てくらいなら一意のグローバルアドレス (123.456.789.0みたいに) 割り振られていたのですが、どうも v6 だとある程度まとまった世帯に割り振られるようです。そのため、あなたに全く身に覚えがなくても隣人が掲示板を荒らすとあなたまで巻き添えBANを喰らいます。

それで済めばいいですが最悪誤認逮捕の危険性すらあります。IP が共有されるので、IP だけで判断されるとその危険性が十分現実になります。

じゃあ実際IPだけで判断されるか、というところですが日本の警察は何かの専門家ではない (ローテーションの制度とかも理由ではありますが、そもそも法執行機関が弁護士や検察官、裁判官並みの士業(プロ)ワークか?と聞かれたらどの国でもNOでしょう) ので全然起こり得ます。

とはいえ IP アドレスを根拠にして個人特定、というのは他にも Proxy とか Tor とかそもそも IP アドレスで判断できないケースが非常に多いので他の証拠と併せて判断、というのがほとんどかと思います。
ただ運が悪いと偶然服装やら家やら何かしらの要素が似ていて……というのはあるでしょう。

正直 10Gbps という高速回線のメリットはあっても v6 であることのメリットはほぼないです。速度もぶっちゃけ世の中の大半のサービス(サーバーとネットワークインフラ) が依然 v4 なので v6 だから高速というのはないです。Google などは v6 に対応していますが Google は元から速いので……。

うーんと……つまり……??

次の方は 10Gbps への切り替え・契約はやめておきましょう。

  • ネットワークまわりに全く知識がないか、知人等にわかる人・頼れる人が全くいない
  • 現在 IPv4 環境で一般公開サーバーやミッションクリティカルなものを運用しており、絶対に切らせられない
  • ネトゲ、特にFPSゲーム等に人生をかけている (特に eSports 選手などで数日のブランクも許されない状況など)
  • 時間的・お金的な余裕がない (10Gbps 対応ルーターは3万円以上するのも珍しくありません)
  • ぶっちゃけ 10Gbps そんなに必要じゃない

実際速いの?

やや微妙というか、いや……速いサービスは速いです。GoogleやOnedriveのダウンロード・アップロードは鬼のような速度で完了します。GB単位のファイルもOnedriveに上げるときは冗談抜きで数秒で完了するので、特に最近流行りのAIモデルのやりとりや、クリエイティブ用途で動画やCGを扱う方はいいと思います。

が、そもそもそれだと別にAIモデルにしたってDLしたあとは別に10Gbpsのインターネットはいらないですし、後者にしても個人事業主ならいざ知らず会社勤めだと個人回線使いません・使えませんから……。

おそらくこの手の「自宅ネットワークの10Gbps化」を考えるような方だと、NAS と PC間のような、ローカルを10Gbps化したほうが遥かに効果が高い気がします。

これだとNASストレージをSSDにするメリットも出てきますし、10Gbps をリンクアグリゲーションすれば 20Gbps での通信も夢ではありません。しかも最近は10Gbps 対応NICも現実的な値段まで安くなってきました。

Note:
ルーターやスイッチまで10Gbpsでなくとも、NASとワークステーション間を直結させて(それぞれインターネット用は別に用意。オンボードをそっちに回すとか)、
IPを適当に 10.0.0.1 と 10.0.0.2 で割り振ってゲートウェイ諸々の設定は放ったらかし……でも今の時代繋がります。
あとはエクスプローラーのアドレスバーにNetBIOS名ではなく、上記の直結アドレスでアクセスすればOKですし。10GbE NIC 2つと Cat.6a の LANケーブル買うだけなので簡単ですよ。
※ちなみにLANケーブルは7以上は逆効果 (仕様上、End-to-Endのシールドが必須で真面目にやるとかえって高くつく)

なので個人的には、10Gbps インターネット回線の契約を絶対におすすめできる方は究極的には以下の1パターンしかありません。

  • 自己満足

以上です。


ここからは実際に導入した方が遭遇しそうな問題のFAQを載せます。

導入後FAQ

XX番のポートが開放できないんだけど……

仕様です。v6でも契約内容によって違ったり?あとはルーターによっても違うらしいです。ちょっとこのあたりはわかりません。

v6 って VPN 使えないの?

別記事をご覧ください。普通には使えないですね。楽したいならヤマハのルーター買うのもアリかと。

もしかして固定IPで一般公開サーバー運用とかできない?

いえ、固定IPは従来どおりISPとの契約によりけりです。ただここらへんは各社違うのと、最悪今まで使っていたISPから乗り換えということもあるのでよく吟味したほうがいいかと。v4ではやっていてもv6では提供していないところもあるようです。

v6ではポート制限などもありますし、ただでさえ1GbE環境でも高いエンタープライズ機器の価格が10GbEだと跳ね上がります。興味があるなら一度テスト環境やすでに導入した知り合いの組織で一通り体験してみるのが手っ取り早いですね。
そもそも「インターネット」でそこまで必要でしょうか?内部10GbE化だけでもわりといい感じになるケースは少なくないはずです。もっとも、Googleや先進国の国家機関レベルのDBを運用してるなら別ですが。
ちなみに10GbEより上を目指す場合は、Mellanox の Infiniband 等まで視野に入ってきます (もはや Ethernet の仕様・定義ではなくなります)。が、それでインターネットとなると聞いたことがないというか、2023年でもまだ実証実験レベルでしょうか……。

レンタルルーターやっぱやめて市販のルーターにしたんだけど繋がらない

仕様です。先程も言った通り、VNEのシグナル(スクリプトか何か?)の仕様がレンタルHGWと市販ので違うみたいで受け付けません。われわれが入力できるID/パスの認証ではないので、原則VNEからの認証が通らない限りあなたの家には回線がない扱いになってしまいます。

あなたがお金払って回線を引いても、その認証のコントロール方法はあなたにはないのです。これがIPoEというやつです。

ISPに電話して、ありのまま伝えましょう。基本的にわかってる担当者ならシグナルの再送信をしてくれるはずです。なお再送信には1日見ておいてください。その間ネットは使えません

市販ルーターならどのルーターでもいいの?

違います。IPv6対応とうたっていても細かい違いがあります。きちんとメーカーのサイトで対応ISP・サービスが明記されたページを確認することを強くおすすめします。

間違っても「10Gbpsじゃなくてもとりあえず疎通確認さえできればいいや」と思って安いv4オンリーのルーターなんか買わないでくださいね。

ちなみに今は絶賛10GbpE過渡期なので何買っても当たり外れ激しい気がします。安定なのは Aterm ですかね?6万円しますけど (10GbE 2ポートある NICよりも、下手なSOHO向けNASより高い)。
(……だったらヤマハRTXシリーズ買ったほうがよさそうな気が。)

NTTのレンタル HGW (XG-100NE) クソじゃない?

クソです。……え あれマジクソじゃないですか?

しばらく通信がブツブツ切れるわまともにネトゲできないわ、WiFi切れるわ(これは未だにそう) でひどすぎました。勝手にいつのまにか再起動しているし、何故か特定の機器だけ WiFi 繋がらないなど……

まあバッファロー等の一般ルーターは平気で3・4万しますし、NECのAtermなんて10G対応というだけで6万円弱ですからね。ちょっと民生用というカテゴリで売るのはまだ早い気がします。
それを考えるとレンタルHGWは月額500円くらい?なので2-3年運用でも 500 x 12 x 3 = 1.8万円 と格安ですし、3年も経てばさすがにいい製品も出るのでは?という気持ちで使ってますが。

以下、1年以上経過したので今のところの対処法書きます。

1. 差しなおす

意外と光ファイバーケーブルの差しが甘かったりします。特に壁コンセント側で、差さってるように見えてもカチッといってなかったりします。

2. ax を使わない

何回も業者を呼んで改善せず、結局こうなりました。せっかくの 10 Gbps ですが IEEE 802.11ac と IEEE 802.11ax の混在環境下では不具合の原因になりやすいそうで、 ac 対応機器がひとつでも存在する限り、 ax はオフにしておくのが賢明だそうです。ふざけんな

3. 固定IPを割り振る

最初 PS5 でも PC でもやたらネットワークの瞬断が発生し、常時接続前提のネットワーク系のゲームは全滅状態でした。これは PS5 側の問題もあった (IPv6 への対応や設定でオフにできないなど) ところもありますが、ひとまず設定で全機器に固定IPを割り振ることでなんとか収まりました。

機器が1台の方はひとつ分、10台は10個のIPを、100台の方は100個割り振りましょう。簡単ですね!!
ちなみに私の場合は意外とIoT機器やらゲーム機、スマホ、タブレット、PC、…などなどで20台くらいでした。ふざけんな(二度目)

4. WiFi の ON/OFF 切り替えをする

特定の機器でなぜか WiFi が繋がらない・途中から繋がらなくなる現象については残念ながら今も継続しており、自分の環境では Android スマホだけそうなります。WiFi の ON/OFF 切り替えで復旧はしますがめんどくさいです。そのうち家にいるのにモバイル通信使うようになります。アレ??

5. 5GHz は使用するチャンネルを48までにする

5GHz は航空機用に DFS という仕組みがあり、 W53 / 56 帯は場所によっては途切れやすいかもしれません。

6. ネットワークを過度にビジーにしない

何のための10GbEだよ……と言いたくなるかもしれませんが、正直民生用の機器だと常時10Gbps上限近い通信を維持するには熱環境や機器の耐久的にまだまだ厳しいのではないか、というのが私の見解です。

通常の1Gbpsくらいであれば全く問題ないと思います。10Gbps通信であっても12時間くらいなら大丈夫そうですが、中の人でもなんでもないのでそのあたりの線引きはわかりません。

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最後に私はまだやっていませんが、おそらく一番良さそうな対処法を書きます。

999. XG-100NE を使わない・そもそも v6 にしない

……やっぱ究極的にはこうなっちゃいますね。まあ各社10Gbpsクラスは軒並み3万円下回らない価格のルーターが多いんで、多分人類にはまだ早いのでしょう。

ただ一度 10GbE 体験すると 2.5GbE でも遅く感じてしまうんですよね……慣れって困りものです。

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